今夜、妊娠したら結婚します~エリート外科医は懐妊婚を所望する~
第二章 命と向き合う瞳
ガラスの小窓の向こうに手術室が見える。

青い布を被せられた患者と、その周りを取り囲む複数の医師。無影灯が患者の胸部を煌々と照らし出していた。

シャーカステンにはレントゲン写真が貼られている。先ほど撮った造影CTの写真だろう。

患者の頭の上には大型の機器が並んでいて、素人の私にもわかるものといったら、コテのような持ち手がふたつある心肺蘇生用の機器、心拍や脈拍などを管理するモニター、それから、人工呼吸器くらいだろうか。

その脇にある大きな機械は、人工心肺だと眞木先生が教えてくれた。

「心臓を止めるときに、あの機械を使って――」

「し、心臓を止めるんですか……?」

「うん。動いていたら大出血してしまうし」

手術は悪くなった血管を切り取って人工的な血管に置き換えるのだと言う。

眞木先生が私の手帳に図を描いて患者の病状を説明してくれた。

「ここ、大動脈の壁は、三枚の膜が重なってできている。内側の膜に亀裂が入ると、血流に押されて内膜がどんどん剥がれていく」

整形外科の専門医と言っても、研修医時代はひと通りの科を回って研修するそうで、全身の医学知識を持っているのだそうだ。
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