今夜、妊娠したら結婚します~エリート外科医は懐妊婚を所望する~
第三章 キスしかあげない
金曜日の十一時。カメラマンとともに須皇総合病院に向かった。

私が撮影場所に選んだのは、病院の正面玄関の脇にある、病院名が刻まれた石碑の前。

道が広いから通行の妨げにもならずいいかなぁと思いきや、平日の十一時、そんな場所で撮影をしていれば、どうしても目立ってしまうわけで。

「撮影がこんなに恥ずかしいものだとは思わなかったよ」

割とふてぶてしい性格の西園寺先生ですらまいってしまった。カメラを構えているだけで自然と人だかりができてしまうのだ。

『なになに? ドラマの撮影!?』

『雑誌の撮影らしいわよ。本物のお医者さんですって』

『嘘!? イケメン!』

『私もあの人に見てもらいたいわぁ。何科の先生なのかしら』

早くも女子およびご婦人方の視線を一心に浴びている。

「この群衆の前で俺にキメ顔をしろと? 本気で言ってる?」

「……西園寺先生なら、注目されるのも慣れているんじゃ」

「勘弁してくれ。頼むから、せめてひと気のない場所にして」

慌てて院長先生に許可をもらい、入院棟の屋上にある、関係者以外立ち入り禁止の一角を使わせてもらうことになった。
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