「懐かしい、リナの部屋」

あたしの家に上がり込んだヒロキが、ふたりがけソファーの右端に勝手に腰掛ける。そこは、彼がまだあたしの家に来ていたときの定位置だった。


「ここに彼が泊まりに来てたらとか、あたしと彼が一緒に住んでいるかもしれないとか、そういう可能性を少しは考えなかったの?」

少し嫌味っぽく訊ねると、ヒロキが今気が付いたように大きくひとつ瞬きをした。


「そういうのはあんまり考えてなかった。でも可能性なんて考えても仕方なくない?実際、リナはひとりだったんだから」

緩く微笑んで首を傾げるヒロキを呆れ顔で見つめながら、あたしはローテーブルにワイングラスをふたつ並べた。


「変わらないね。そうやって、相手の都合なんて気にせずに自分の考えだけで行動しちゃうところ」

思い付きで行動するくせに、いつもそれでなんとかなってしまう。適当なのに、何でも器用にやりこなす。そういうところはヒロキの魅力でもあった。

次々と自分がやりたいことを思い付いてはあたしを引っ張っていく。そんなヒロキと一緒にいるのは楽しかった。

どこにいても何をしていてもドキドキした。しあわせな気持ちで笑っていられる時間だけが、いつまでも永遠に続くような気がした。