暗闇が怖い。
 そう言うと、誰もが笑う。
「もう、子供じゃないんだから」って。
 私は悔しいけど、「うん」と頷くことしか出来なかった。

 暗闇が怖いのに。
 着実に瞼が閉じようとしている。
 目を閉じてしまえば、暗闇だ。

 こんな時だからこそなのかな…
 頭に浮かぶのは、子供の頃の光景だ。
 あの頃を思い出すと、涙が出るくらい懐かしくて遠い存在。
 心残りがあるとすれば、私を育ててくれた養父母は元気だろうか?
 会えなくても、元気でいてくれればそれでいい。

「……」
 22年ほど生きてきた人生も、ついに終わったかと思った。
 ぬるりと顔に張り付いている液体は、おそらく血だろう。
 毎日、怒号と暴力を受けて。
 ついに、死ぬんだなと思った。
 うっすらと、夫が何かを喋っている気がするが。
 意識は着実に遠のいていく。

 神様。
 次に生まれ変わるならば、幸せな家庭が築けますように。
 男に生まれ変わっても、女に生まれ変わってもいい。
 貧乏すぎるのは嫌だけれども。
 家族が笑顔で過ごせるような家庭に生まれ変われますように。