あっというまに一週間が経って。
 ヒョウさんが帰ってきた。
 ちょうど、ベッドに潜り込もうとしたところに。
 余所行きの高価そうなスーツ姿でヒョウさんが現れた。
「ただいま」
 ふんわりとヒョウさんが笑うから。
 こっちも、つられてニヤけて「おかえりなさい」と言ってしまった。

 ヒョウさんは、ベッドの前に置いてある椅子に座った。
「随分と回復したみたいだね」
 そう言って、ヒョウさんは私の頭を撫でる。
 ぼんやりした明かりから見えるヒョウさんの表情には少し疲れが見えた。
 じっと、私の顔を見つめるヒョウさんに。
 もう大丈夫ですから…と言おうとすると。
 ドアがノックされて、ヒサメさんが入ってきた。
「代わるよ、ヒョウ」
 その時、初めて。
 私はヒサメさんがニッコリと笑ったことに気づいた。
「いや、大丈夫だよ? 俺、元気よ」
 ドア付近で、こちらに聞こえない程度に、
 ヒョウさんとヒサメさんが何かを話している。
「何、話してるんですか?」
 と、割り込む勇気がない。

 聞いてはいけない会話なのかなぁと思いながら。
 窓の外を見ていると、
「カスミ、明日ゆっくり話そう!」
 大声でヒョウさんが、こっちに手を振った。
「ハイハイ、ヒョウさんはさっさと行ってください」
 追い出すように、ヒサメさんがヒョウさんをせかして退出させる。

「あの人、自分のことおかまいなしに他人ばかりに神経使うからねえ。こっちが気を遣いませんと」
 そう言って、「よいしょっと」と声を出して。
 椅子に座る。
 別に、ヒサメさんだって無理して来なくていいのに。

 また、傷つく。
「ああ、別に貴女に対しては、気を遣ってませんから」
 何だろう。
 今夜は、ヒサメさんに何を言われても傷つくなあと思ってしまう。

 一気に部屋が静まり返って。
 妙に緊張してくる。
 けど、ヒサメさんは何も考えていないように無表情。

「ヒョウは、恋人のところへ真っ先に行きたかったんだと思うよ」
 じっと冷たい目でヒサメさんが私を見る。
 少し肌寒い中で、膝の部分まで毛布をかける。
 病人と側で看病する人・・・という画が出来上がる。(もう病人じゃないけど)

 ヒサメさんの一言に「そうですか」と言った後、
 あれ? と思ってしまった。
「ヒョウさんの恋人さんが此処へ来ているんですか?」
 そもそも、ヒョウさんに恋人がいたのも初耳だ。
「来てるも何も、一緒に暮らしてるじゃないか」
 馬鹿にするように言うので。
 私は「うん?」と首を傾げてしまった。
「昼間、会ってるでしょ」
「え…誰にですか?」
「誰って、アラレのことは知ってるでしょ?」
「アラレさんは知ってますけど。女の人ってこの屋敷には住んでないんですよね?」
 そう言うと。
 ヒサメさんは黙ってしまった。
 足を組んで、「あーあ」と特徴のある高い声で呟いた。