確かに。
 力強くヒサメさんに抱きしめられた・・・よね?

 急に、どうしてあんなことをしたのだろう。
 泣いていたから?
 女嫌いのくせに?
 あ、もしかして誰かと間違えたとか…。
 え、そもそも何で抱きしめる?
 ごめんって言ったよね?
 どういうこと?

「カスミちゃん、雑草じゃないのも引っこ抜いてるよ」
 頭上からアラレさんの声がして、驚いたはずみで尻餅をつく。
 いつも通り畑仕事していたけど。
 ずっと頭の中ではヒサメさんが頭を支配している。
「大丈夫?」
 心配そうにアラレさんが手を引いて立ち上がらせてくれる。

 ずっとヒサメさんに抱きしめられたのを思い出しては、
 顔が熱くなる。
 でも、こんなこと誰にも言えない。
 そもそも、あれは現実?

 ずーとヒサメさんが頭からはなれない。
 秘密の館には、イケメン男性が沢山いるというのに。
 どうして、ヒサメさんに心を支配されているのだろう。

「おい、ヒカリ。水あげすぎだぞ」
「え?」
 モヤさんの言葉で我に返ると。
 目の前の花壇にずっと水をあげていたらしい。
 水たまりが出来ている。
「わあっ」
 驚いて、後ろに飛び跳ねる。

「ヒカリ。ずっと変だぞ」
 むっとした表情でモヤさんが言った。
 モヤさんに会うのは久しぶりだというのに。
 毎日会っているような口調で話しかけられる。
 いや、もう一週間経っているいるのだ。
 馬鹿みたいにずっとヒサメさんのことを考えていると。
 あっというまに一週間経ってしまったのだ。
「少し休め」
 そう言うと。モヤさんは木陰を指さした。

 午後3時くらいになると。
 たいてい、木陰で休憩をとるようにしている。
 タオルで額の汗を拭うと。
 私はモヤさんが隣にもいるにも関わらず別世界へと飛び立ってしまっている。
「今日、来るらしいな」
 モヤさんの一言で。
 我に返った。
「誰がです?」
 モヤさんはニヤリと笑う。
 一ヵ月ぶりに戻ってきたモヤさんの顔は日焼けして黒くなっている。
「ヒカリの侍女」