カラフル☆デイズ

別の仕事


「例え、今後また忘れることがあったとしても、あの人にだけは二度と借りないんだからっっ!!」


勢いよく腕を振り下ろすと、ダンッ、と大きな音が鳴った。


「まひる……さん?その手に持ってる包丁を、とりあえずお兄ちゃんに貸してくれない、かな?」


いつの間にか仕事から帰って来ていたあさ兄が、私の斜め後ろから、まるで強盗犯に凶器を向けられた人みたいに、恐る恐る私に話し掛けてきた。


「……あ、」


たった今、激しい音を立てた先に目を遣れば、いびつな形をした人参が無残に散らばっていて、無意識に食べ物に当たってしまうほど、あの先輩に腹を立てていた自分に気付く。


包丁をまな板の上に置いて手を放すと、あさ兄が深く息を吐き出した。


「いつ手を切るんじゃないかと、ハラハラしたよ」


そう言って、あさ兄は私を包丁の側から離した。


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