「私も夕日と一緒に消えちゃいたい」
 浜辺に座り、水平線の彼方に沈んでいく夕日を見つめながらポツリと呟いたら、背後から声がした。
 それは、家族で葉山の別荘に遊びに来ていた時の出来事。
「どうしてそんな悲しいことを言うの?」
 優しいお兄さんの声。
 ハッとして振り返ると、目は切れ長の二重で秀麗な顔立ちをした背の高い青年が立っていた。
 年は十八くらいに見える。艶のある漆黒の髪に、キラリと光る珈琲色をした瞳が印象的だ。肌は雪のように白く、仕立てのよさそうな黒い背広を着ていたが、黒いネクタイを緩め、シャツのボタンをいくつか外して着崩している。
 でも、彼から感じる気品とオーラが凄くてキラキラ輝いて見えて、思わず尋ねた。
「あなたは天使さま?」
かなり頓珍漢なことを言ってしまったのか、青年はクスッと笑った。
そんなことを言われたのは初めてだよ、かわいいお嬢さん。でも、残念ながら天使じゃない。君と同じ人間だよ」