昭和懐妊娶られ婚【元号旦那様シリーズ昭和編】
彼女が不憫でならなかった。
 元々パーティを途中で抜ける予定だった俺は、挨拶だけ済ませて凛を迎えに行き、うちに連れてきた。
 パーティ自体はじいさんが孫の自慢をするために開いたもので、あまり意味はない。それに十代の頃から祖父について直接彼の経営学を学んでいたから、関連企業の重役は皆俺の顔を知っている。
 ここは広尾にある俺の別邸。俺が二十歳の時にじいさんが『お前がこれまで頑張った褒美だ』と言って気前よくプレゼントしてくれた。
 それからは、別邸で過ごすことの方が多くなった。
 ここは俺が安らげる場所。凛が少しでも楽しんでくれればいい。
「細かいことは気にするな。それにお金のやりくりはお前の仕事。お前が無能ならしないさ」
 花火を打ち上げるのに莫大な費用がかかるのは知っている。
 だが、使いたい時に使わなければ金を持っていても意味がない。
 皆が喜ぶなら安いものだ。
 ハーッと彼が俺を見てわざとらしく溜め息をつくかと思ったその時、凛が少し据わった目で右京に話しかけた。
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