昭和懐妊娶られ婚【元号旦那様シリーズ昭和編】
11、燃え盛る赤い炎と静かな青い炎
「鷹政さん、どうしよう。凄く緊張してきました」
 落ち着かない様子でそう訴えたら、黒い背広にピンクのアスコットタイをした彼はお医者さんのような真剣な顔で私の胸に手を当てた。
「本当だ。心臓の鼓動が凄く速い」
 淡々とした口調で説明する彼。
「た、鷹政さん! なにするんですか!」
 ドキドキしながら注意する私に彼は真顔で返す。
「愛する婚約者の身体の状態をチェックしてる」
 クールな顔して私で遊んでいません?
「どうしても出なくちゃいけないですか?」
 縋るような目で彼を見つめるが、あっさり拒否された。
「今日のパーティは凛のお披露目だからダメだな」
「ハーッ、パーティ昔から苦手なんですよ」
 彼の返答にがっくり肩を落とした。
 鷹政さんとホタルを見た数日後、私たちは日本一大きな豪華客船に乗っていた。
 全長二百六十メートル、高さ五十メートルの船は、まるで巨大なビルのよう。
 今日は青山傘下の造船所で製造されたこの客船のお披露目パーティ。
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