昭和懐妊娶られ婚【元号旦那様シリーズ昭和編】
13、彼に愛されて
『ごめん。最初に謝っておくけど、ゆっくり寝かせられないかもしれない。今日は初夜だからね』
 神前式の後、鷹政さんにそう宣言されて顔面蒼白になった私。
 客船での火事や式の準備で初夜のことなんてすっかり忘れていた。
 しかも、確かお風呂で彼に抱かれそうになった時に『初夜でお願いします!』なんて自分で頼んだんだよね。
 披露宴中なのに、鷹政さんのその言葉が頭の中をぐるぐる回っていて緊張でテーブルに置かれた食事にも手をつけられない。
 時刻は午後五時十分。
 私がいるのは目黒にある高級ホテルの大広間。
 招待客が三百人もいる着席形式のパーティで中央の壇上に鷹政さんと並んで座り、私たちの前には丸テーブルがいくつも並んでいて、みんな食事を楽しみながらお偉いさんの挨拶を聞いている。
今もどこぞの企業の社長がお祝いの言葉を述べているのだが、全然頭に入ってこない。初夜……という二文字が私の頭の上にズトーンと落ちてきて、苦しくてもがいている状態。
 
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