昭和懐妊娶られ婚【元号旦那様シリーズ昭和編】
すぐに帰ってくれてよかった。
「佐々木さんっていつもあんな感じ?」
 不意に森田さんに聞かれ、キョトンとする。
「あんなって?」
「会社でいつも女の子口説いてるの?」
「ああ。口説くというかあれは挨拶ですね。女の子みんなに言ってますから。でも、仕事はちゃんとしてるんですよ」
 一応誤解のないように言っておく。
「まあ、仕事しなければただの給料泥棒だ」
 彼の皮肉に苦笑いした。
 森田さんってなかなか手厳しい。
 机の上を片付けてバッグを手にすると、彼に声をかけた。
「それじゃあ、私もお先に失礼します」
「弟さん、会社まで迎えに来てくれるのか? もう結構暗いが」
 森田さんの質問にギクッとする。親切心で声をかけてくれたのはわかっているのだけど、そこは聞き流してほしかった。
「あ……あれは嘘というかなんというか。大丈夫です。私ひとりには慣れてますから」
 笑ってごまかし、後ずさりしながらそそくさと会社を出る。
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