「どうかしたか?」
 彼が心配そうに私の顔を覗き込んだその時、月明かりに照らされて彼の顔がはっきりと見えた。
 切れ長二重の目をしていて全体的に線が細く、綺麗な顔立ちをしている。
 ハンサムというよりは美形という言葉がピッタリで、なぜだか知らないが懐かしい感じがした。
「あの……メガネを。でも、曲がっちゃいましたね」
 メガネを手渡したら、彼はポケットにしまって私にバッグを差し出した。
「ああ。ありがとう。家に替えのメガネがあるから問題ない。これは君のバッグだ」
「ありがとうございます。森田さんがいて助かりました」
 彼がいなかったら、バッグも取られ、顔も殴られていただろう。
 そう考えるとゾッとした。
「ちょっと保科さんが心配でね。……足、血が出てる」
 彼が屈んで花緒が切れた右足にそっと触れ、スーツのポケットからハンカチを取り出す。足元を見たら、親指の皮が剥けて血が出ていた。
「ハンカチが汚れます。こんな怪我慣れてますから」
 怪我した足を引っ込めようとしたが、彼に注意された。