昭和懐妊娶られ婚【元号旦那様シリーズ昭和編】
 私の父は伯爵で大日本帝国陸軍大佐だから、なに不自由なく暮らしてきたと世間の人は思うかもしれないが、伯爵家の次女として生まれた自分を幸せだと思ったことは一度もない。
 私には二歳上の姉と一歳下の弟がいる。
 姉は最初に生まれた子だからというのもあるけれど、とてもかわいいから父に溺愛されているし、弟もまだ小さいのに大人びていて勉強ができるから保科家の後継ぎとして大事にされている。
 しかし、次女で特別器量がいいとは言えず、勉強もそんなにできない私は、父にとってどうでもいい存在。
 亡くなった母は姉を出産した二年後、『次は男の子が欲しい』と言って私を産んだとか。私が家督を継げぬ女の子だったから、両親はかなりがっかりしたらしい。母はあまり身体が強くなかったし、周囲は父に妾を作って子供を産ませるよう強く勧めたそうだ。
 だから、母はなんとしても男の子を産みたかったのだろう。私を出産してすぐに弟を授かった。

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