昭和懐妊娶られ婚【元号旦那様シリーズ昭和編】
気付かれた!
「ちょっと壁にぶつけてしまって。私おっちょこちょいなんです」
 ハハッと笑おうとするが、また涙が溢れてくる。
 そんな私を再び彼は引き寄せた。
「もう無理してしゃべるな。すっきりするまで泣けばいい」
 多分、それは私にとってはとても贅沢な言葉だったと思う。
 いつもこんな風に泣く私を受け止めてくれる人はいなかったから。
 姉や弟の前ではいつも元気な私でいなければいけないってずっと辛いのも我慢していて……。
 昨日父に叩かれたことが悲しくて、子供のように泣いた。
 その温かな胸に自然と心が落ち着いてくる。
 泣くことで心の中がすっきりした。
「もう大丈夫です」
 小さく笑って森田さんから離れ、再びお弁当のおにぎりを食べるが、塩味が強いように思えた。
「……しょっぱい」
 顔をしかめる私の頭を森田さんがクシュッと撫でる。
「涙で塩辛く感じるんじゃないか?」
「そうかも」
 彼と目を合わせ、にっこりと微笑んだ。
「次は塩分控えめでいいかもしれないな」
 森田さんが目を細めて茶目っ気たっぷりに言う。
 その笑顔に私の心も晴れやかになった。

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