昭和懐妊娶られ婚【元号旦那様シリーズ昭和編】
4、金の指輪と彼女
「お前が相合傘とはなあ。わしも昔はばあさんとしたものじゃあ」
 青山国際通商を出て赤坂にある青山邸に車で向かっていると、隣に座っていた祖父が今は他界している祖母を懐かしむふりをして俺と凛とのことをからかってきた。
「同僚が雨に濡れそうだったから入れてあげただけですよ」
 今朝、青山国際通商の正面玄関でじいさんと目が合った時、絶対に俺を冷やかすと思っていた。
 案の定、祖父はここぞとばかりにしつこく俺を弄る。
「同僚とはお前にしてはお粗末な弁解じゃのう。見合いをしろと言っても、お前が頑なに拒否した理由がやっとわかったわ。あんなかわいい子を隠していたか」
「なにか誤解してませんか?」
 冷ややかに返す俺を見て、祖父は含み笑いをした。
「誤解? 凛ちゃんはあの指輪を持っていたではないか」
 凛が持っている指輪は俺が父親からもらったもの。鷹の彫刻がされたその指輪は代々青山家の後継ぎに引き継がれるもので、次期総帥の証でもある。
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