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     掃
      除
       屋

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 打ちっぱなしのコンクリートに囲まれた廊下。

 一定の間隔で壁には扉がついている。


 蛍光灯のほの暗い明かりが唯一の頼りだった。


「ここ、ですね」


 作業着に身を包んだ昭仁はソレを見つけ、足を止めた。

 ソレが前にいた黒い扉。

 そこが目的地なのだと覚る。

 昭仁はしゃがみ込み、ソレを――蛆を、つまみ上げた。


「ですよね?」


 確認のために黒い扉を指しながら、後ろからついてきていた依頼者を振り返る。


「え、ええ……」


 手袋をはめているとはいえ手で蛆をつかんだ昭仁に、この安アパートのオーナーである依頼者は蒼い顔をしていた。


「開けてもらえますか?」


「は、はい」


 依頼者は合い鍵を出して解錠するが、ドアノブに手をかけようとはしない。


「私一人で見てきましょう」


「すみません」


 見るからに部屋に入りたくなさそうな依頼者に申し出ると、申し訳なさそうに、けれど有り難そうに頭を下げられた。


「お邪魔します」


 ガチャリとドアノブを回すと、扉の隙間から丸々と太った蝿と異臭が飛び出してくる。


「うっ」


 依頼者はたじろいで後ずさるが、昭仁はためらわずにその中へと飛び込んで行った。


「結構臭うな」


 昭仁は首から下げていた特殊マスクを装着して、臭いと蝿が外に出ないよう扉を閉めた。

 玄関入ってすぐのキッチンを横切り、ワンルームへの扉のドアノブに手をかける。

 その扉は一センチほど隙間が開いており、そこから異臭と蝿が行き来していた。

 目に入りそうなほど近くを飛び交う蝿を軽く手で追い払うと、扉を開け放って踏み込む。


 すぐにこの異臭と蝿の発生源が目に入った。



 部屋の中央に敷かれた布団に、腐乱液が人の形に染み込んでいる。

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