義理のお兄ちゃんの学園プリンスに愛されちゃってます~たくさんの好きをあなたに~
妹はお嫁さん?
「おかえりなさい!」
 ただいま、という声が玄関からしたので、梓は、ぱっとリビングのソファを立った。
 今日は生徒会の仕事がなかったので早く帰れたのだ。部活の手芸部もなかったし。そもそも活動的な部活ではないから毎日は活動がない。
 なので掃除を終えてからすぐに帰ることができた。
 リビングのWi-Fiを使って、最近友達同士の中で流行っているアプリゲームをやっていたのだけど、それは放り出して玄関へ向かってしまった。
 今はスマホより、ゲームより「ただいま」を言ってきた人物のほうが大事だったから。
 リビングのドアを開けて、廊下へ出る。冷房をかけていたので、ドアはしっかり閉める。廊下はむわっと熱気が立ち込めていた。
 もうすっかり夏だ。真夏よりはまだまだ暑くないけれど、じゅうぶんに暑い。
「ただいま、梓」
 玄関のドアを閉めて、靴を脱ぎながら渉はにこっと笑って、今度は梓に向かって「ただいま」を言ってくれた。梓の心がほわっとあたたかくなる声と言葉で。
 今日は渉はバスケ部のほうへ行っていたようだ。バスケ部の大きなスポーツバッグが置かれている。
 それにふわっと、例のシトラスの香りがしたから。今日もしっかり汗拭きシートを使ってきたらしい。
 早く帰りたいだろうに。暑い折だし疲れているに決まっている。
 それでも手を抜かないのは、身なりに気を使う立派なオトナで男の子だなぁ、と梓は感心するのだった。
 渉のこの香りは好きだった。色々な意味で梓の心をくすぐる香り。
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