ずっとあなたが好きでした。
side 翔子
(潤の馬鹿……)



『良かったら、遊びにおいでよ。』



なんて無神経な人なんだろう。
遊びになんて行けるはずがない。
そりゃあ、昔はまるで親戚の家みたいに平気で入って寛いでたけど…



私達の間には、十年余りものブランクがある。
しかも、私達は歳を取り、潤には素敵な彼女さんもいて…



そんなの、行けるはずがないじゃない。



わかってるよ、潤が悪いわけじゃない。
潤は、ただ思った通りのことを言っただけ。



(私はやっぱりただの幼馴染でしかないんだよね…)



もしかしたら、私がひねくれてるだけなのかもしれない。
潤は好意で誘ってくれたのに…
潤が私に特別な感情なんか持ってないこともわかってるのに…
それなのに、そのことが悲しくて悔しくて仕方がない。



そうだ。馬鹿なのは、潤じゃなくて私だ。
馬鹿なだけじゃなくて、私は嘘吐きだ。



映画には一人で行ったのに、連れがいるって言って…
しかも、居もしない彼氏の用事のために、早くに帰ったと嘘を吐いた。



映画の後、潤は、私を探してくれたらしい。
嬉しかった。



でも、探してどうするつもりだったんだろう?
あの綺麗な彼女さんを私に紹介でもしてくれるつもりだったのかな?



(潤、酷いよ……)



今日は、あれだけ泣いたのに、また一粒の涙がこぼれ落ちた。






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