巡り行く季節の中心から【連載中】

桜花爛漫のもとで

□夏枝side


春も真っ只中な桜吹雪が舞い踊る並木道を、全力で駆け抜ける。
希望に満ち溢れた胸の鼓動を加速させつつも、一歩一歩、力強く前へ。
散りゆく花びらにセーラー服をかすめながら淡いピンク色のトンネルを抜ければ、そこにはあたしの中学校生活ラスト一年間の舞台――東雲中学校が姿を現した。


「おはよー加奈(かな)!」
「あ、やっと来た~。ちょっと夏枝(なつえ)何してたのさ、遅いよ~」


友人の加奈に元気よく挨拶を告げると、むすっと頬を膨らませ不満を漏らされた。


「ごめんごめん、寝坊しちゃって。昨日興奮してあまり眠れなかったのよ」


念のため言っておくけど断じてやましい意味じゃないわよ。
例えるなら、そうね……遠足前日早くに布団に入ったものの、楽しみのあまりに中々寝付けない小学生の心理みたいなものかしら。
とにかくまあ、すっかり睡魔が消え失せているあの状態だったわけよ。
そんな弁解をしていたら、ニシシと怪しく笑う加奈にクラス発表の確認を催促された。

加奈の意味深な笑みを見て察する。
これはもしかしなくても、もしかするかも!?
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