腹黒策士が夢見鳥を籠絡するまでの7日間【番外編② 2021.5.19 UP】
6日目『覚悟』
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―――あそこまでは計算通りだった。
ただ、急に、何が起こったんだ……?
予想されることと言えば、彼女がいつも勘違いして考えが突っ走ることだ。
ただ、それも計算のうちに入れていたはずだが……。
そんなことを考え、一人、泳いでいたプールの水面から顔を出すと、
見知らぬ女の子たちに声をかけられた。
こういう時、まただ、と思う。
何故か昔から、よく声をかけられた。
自分が、顔がいい部類の人間だということは多少なりともわかっていた。
しかし、原因はそれだけではないとも思っていた。
自分がいつも彼女を欲しながらも手に入れられなくて、
そんな渇望と揺らぎが、相手に見透かされているのではないかと思ったりする。
(……考えすぎかな)
そう思って、ため息を一つ。
自分の性格上、相手が誰であれ、ひどい対応ができないタイプだ。
下手に人間関係に波風を立てる気もない。
特に、学生を教える、という立場上、
自分が相手に好意を持っていなくても、たとえ相手が暴走しても、傷つけていいというわけではないのだ。
「連れがいるから、あっちいって」
なのに今日に限っては、なぜか眉を寄せて、声をかけてきた女の子に、怒ったようにそう返してしまった。
女の子たちは、怒って去っていった。
あぁ、これは、ただの八つ当たりだ。
長く求め続けたなによりも欲しかったものが手に入らなかったことへの八つ当たり。
こんな小さな人間だから、
彼女をいつまでもこの手のうちに収められままなのだろう。
きっと、今、自分は、自暴自棄になっている。
「連れ? それ、どこにいるのよ」
その愛しい声に顔を上げた。
思わず頬が緩んで微笑んでしまう。
すると彼女は少し恥ずかしそうに、目を背けた。
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