やわらかな檻
 くい、と服の裾を引っ張られてようやく私は気付いた。

 右手前には所々にフリルのついた白いワンピースを着た少女。

 数メートル先には苦笑しつつそれを見やる、少女の両親らしき二人がいる。目が合ったからか会釈をしてくれた。


 見るからに育ちの良さそうな子だった。

 つやつやとした黒髪がおかっぱに切り揃えられていて、またそれが良く似合う。

 愛らしい顔立ち、大人になればさぞかし。


 ……おっと。
 どうやら、一緒に暮らしている内に仁科の思考と似てきているようだ。危なすぎる。

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