離縁するはずが、エリート外科医の溺愛に捕まりました
夫婦の甘いお家時間


 まな板の上では、最後に白髪ねぎが刻まれていく。

 ⅠHの上には、浅型の鍋と小ぶりな深型鍋のふたつが並ぶ。

 今晩は金目鯛の煮付けと野菜をたくさん入れた豚汁をメインに作った和食メニューだ。

 あとは冷蔵庫に待機している酢の物や和え物を出せば食卓は完成となる。


「うん、準備万端」


 支度を終えてカウンターに置いておいたスマートフォンを手に取ると、時刻は午後六時前。

 メッセージアプリには五時過ぎに達樹さんから新着メッセージが届いていて、仕事を終えたという知らせが入っていた。

 勤務先の病院からこのマンションに帰宅する時間は三十分もかからない。

 スムーズな帰宅ならそろそろ帰ってくるはずだ。


「お疲れ様でした。夕飯、支度できてます……と」


 返信の文を作りながら自室へと向かう。

 ドレッサーの鏡を覗き込み、料理をするためにクリップでまとめていた髪を解いた。

 ついでにルースパウダーで肌を整える。

 ティントも手に取ったけれど、達樹さんが帰宅後すぐにキスをしてくるのがルールのように決まっているのが頭をよぎり、唇に塗らずにそっと元の場所に戻した。

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