狂おしいほどに君を愛している

55.リーズナ

「殿下」
「スカーレット様」
「レイクロード」
「アリーヤ」
良かった。二人とも無事だった。
「これは一体」
「話はあと。それよりリーズナ・ブラッティーネを見なかった?」
「いいえ」
「私も見ていません。周りはかなり混乱していますし、近くに居ても気づかなかったと思います」
それもそうよね。
二人とも、服や顔に汚れがついている。これでは知り合いでもすぐには気づかないだろう。
「そうか」
「アリーヤ、レイクロード様と一緒にすぐに避難して」
「スカーレット様はどうなさるんですか?」
「私はオルガの心臓の持ち主として役目を果たさないといけないから一緒に避難はできないわ」
アリーヤの目に涙が溜まる。
まるで今生の別れのようだ。この状況で別れるということはそういう意味も含まれるのは確かだろう。
死ぬつもりはないけど、私は人と異なる力を持っているだけで実際は生身の人間だ。
怪我をすれば血が流れるし、痛みだってある。私だって死ぬのだ。それでもノーブレスオブリージュを果たせと交わした誓約に基づいて国は言うのだ。
「殿下はスカーレット様と一緒に行かれるのですか?」
「ああ。お前は彼女を頼む」
レイクロードは立場的にはノエルについて行きたいんだろうけど、こんな状況でアリーヤを一人にするわけにもいかない。葛藤の末、彼は了承してくれた。
「お気を付けてください、殿下。ここが他国だということを忘れないでくださいね」
「ああ」
「アリーヤ、また後で会いましょう」
「はい」
二人と別れて私たちはリーズナを探しに行った。
途中で会う生徒には速やかに避難するように言い、怪我をしている生徒にはエドウィン殿下が連れて来た騎士が手を貸していた。


「‥‥リーズナ」
リーズナは教室にいた。
どす黒いオーラを身に纏い、姿形は彼女なのにまるで別人のようだ。
「あっらぁ、誰かと思ったらぁ、クスクス」
間延びしたような口調にネコナデ声。
彼女は確かに猫かぶりだし、見た目と身分の良い男には媚を売るような人だったけどここまであからさまなやり方をする人ではなかった。
私を見てクスクスと笑うリーズナは誰が見ても私を貶しているのが分かる。
「汚らわしいスカーレット、薄汚い血を引いた卑しい娘。クスクス」
クスクスとリーズナは私を見ては笑う。
「どうして生きているの?どうして生まれたの?何度も殺したのに。何度も地獄に叩き落としたのに。お前が、お前如きがオルガの心臓に選ばれた?そんなのは偽り。選ばれたのは私。私こそが真のオルガの心臓の持ち主。お前じゃないっ!」
リーズナが身に纏っていたオーラが彼女の怒りに応えるように私に攻撃を仕掛けてきた。
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