分岐点  ~幸せになるために
4

毎晩 10時過ぎに ラインをして。

週に1回くらい 仕事帰りに 食事をして。

そんなことが 1ヵ月くらい続いた。


毅彦が 既婚者じゃなければ

これって 恋人と同じじゃない?


職場では 今まで通りに 接していたけど。


2人で過ごす時間の 私達は 妙に甘くて。


でも毅彦は あれ以来 キスもしない。


「ねぇ。2人でいる時は 敬語使わなくていいよ。」

「えーっ。急に言われても…」

「それに 課長って呼ぶのも 止めてよ。」

「じゃ 何て呼べばいいんですか?」


「そうだなぁ…毅彦?」

「うっ…恥ずかしい。」

「俺も 沙耶香って呼んでいい?」

「それは いいけど… 会社で 間違えて 呼ばないで下さいね。」

「はい。気をつけます。」


そんな風に 笑い合っていると 

本当に 勘違いしてしまう。


私達は 恋人同士だって…



「毅彦さん…?」

駅に向かう道で 毅彦は 私の手を握る。

「冷たい手…」


そっと 私の手を 自分のポケットに 入れた。


私は ハッとして 毅彦を見上げる。

曖昧な笑顔を 私に返して。


毅彦は 触れるだけの 短いキスをした。


季節は いつの間にか 冬になっていた。







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