囚われのおやゆび姫は異世界王子と婚約をしました。
9話「妖精、言葉を覚える」





   9話「妖精、言葉を覚える」





   ★★★



 この日は、シュリと過ごすために1日空けておいたはずだった。
 彼女に契約の話をすれば、不信感を感じのはわかっていたはずだった。妖精の契約は良いものの婚約なんて、早急すぎるだろう。シュリの怪訝な表情を思い出してはため息をついた。
 けれど、あの人からの連絡を無視する事など出来るはずなかった。

 シュリに「急用が出来てしまった」と言って、彼女の元から離れたのはある気配を感じたからだった。自分の領地にある妖精が入ったのがわかったのだ。ラファエル自身の察知能力が高いのもあるが、その妖精の力が強すぎる事が要因だった。
 ラファエルが屋敷の1番上にある自室に戻ると、すでにその妖精は部屋に居た。


 「………リンネン、来ていたのか」
 「こんにちは、ラファエル王子。相変わらずにお美しいですね」
 「君ほどではないよ、リンネン。国王様はお元気かな?」
 「えぇ。彼は変わらずよ」


 リンネイはラファエルの机の端に腰掛け、ゆらゆらと細い足を揺らしていた。
 炎のように赤い髪は腰まで伸びており、風が吹いていないが足と同じようにゆっくりと揺れている。シンプルな黒いワンピースに、首には髪と同じ色の宝石が付いたチョーカーをしている。シュリと同じぐらいの背丈の妖精。切れ目で凛とした雰囲気がある妖精だった。
 
 炎の妖精リンネイ。彼女のシャレブレ国国王の契約妖精の1人だ。
 現段階で確認されている妖精の中では、トップ3に入る力の持ち主だった。そのため、ラファエルが容易にその存在を確認する事が出来たのだ。



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