その行為は秘匿
プロローグ
2006.5.12

何もない学校で、不意に起きた謎の事件。
とても残酷ないじめにあった女子生徒がトイレで薬の乱用によって自殺した。
しかし、死んだ彼女の遺体どころか使われたはずの薬のゴミや遺書は何一つ残されていなかった。
まるで死んだ遺体がすべてを回収してどこかへ動いていなくなってしまったかのような。
自殺という事実が発覚したのは、一人だけそれを見ていた生徒がいたからだった。
そいつが証拠をすべて隠したか捨てたんだと考える力のない馬鹿な大人たちが騒いだが、結局その生徒は無実だったという。
必死に声を殺して、その女子生徒が薬を服用し死んでいったのを覗いていただけ。トイレの個室でひっそりと。
結局、その事件は未解決となったあれだけ騒いでいたマスコミも学校には、てんと現れなくなり、今ではこの事件を知っている人は教師でもあまりいない。
これが書かれたノートを図書室で見つけた私、中原咲はこの事件にただならぬ興味が湧いた。
15年ほど前の出来事。今ほどメディアが発達していない時代にこの事件は起きた。
誰ももうこの事件を解決にもっていこうとはしなかった。しかし私はそこにいちばん興奮した。なぜ、犯人を突き止めようとせず、未解決のままにしてしまったのか。なぜ、目撃した女子生徒は、自殺した生徒のその後まで見ていなかったのか。個室で隠れて見ていたのだから、そのまま遺体がどうなっていたかまで知ることもできたはず。
しかしどうして…。私はもう何もかも気になって仕方がなかった。
そのままページをペラペラとめくっていると、いちばん最後のページに少しだけ文字が書いてあった。

"その自殺した女子生徒の学校カバンの中には、得体のしれない鍵と1枚の紙が入っていたという。
紙には、『学校』とだけ書かれており、学校のどこかの鍵穴にその鍵がささると考えた大人たちは、探したが、どこにもそのようなものは無かった。"

きっとその開いた場所の向こうにその女子生徒の遺体や薬などが隠されているのだろう。
今頃それらはどうなっているのやら。考えたくもなかった。
ノートに書かれている情報はこれくらいのものだった。
他にも図書室内を探せば、何かあるのかもしれないが。「何見てんの?」
友人の郁弥が話しかけてきた。
「なんでここだってわかったの」
「いや、お前のことだし。ここくらいだろ。」
無駄に背が高いので、無駄に話すとき頭を上げないといけない。
「何だよ、そのボロいノート。」
「ここにあった。ノートなんて図書室にあるんだね。しかも全然書いてないし。」
「え、でもこれ、バーコードついてないぞ。」
…たしかに、図書室にバーコードがついてないほとんど書かれていないノートが普通に棚に並べられている。明らかに不自然だ。
何か大事な伝言とか…。いや、だとしたらなぜ不特定多数に見られそうなこんな場所に。
「誰かに見つけてほしかったんだ。それでこの事件を解決してほしいって…。」
「ん?事件って何。てかまじなにそれ。」
「―この学校の秘密だよ。今すぐ解かなくちゃいけない秘密。」
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