「お前って生きてる価値なくね?」
それは、とある夏の日の出来事だった。 放課後、1人の少年が複数人のクラスメイトに窓際まで追いつめられていた。
「お…オレは…。」 「あ?小さくて聞こえねーよ!!」
ガンッ!!! クラスメイトの1人の膝蹴りが鳩尾に入り、少年はその場に咳き込みながら倒れた。
「もっかい聞くぞ?お前って生きてる価値 なくね?」
膝蹴りを入れたクラスメイトが少年の髪を掴んで聞く。
「は…はい…。」 「そーだろ?そーだろ?分かってんなら、 さっさとシネ。」
先程までヘラヘラと笑っていたクラスメイトたちが少年を見下す。
「シーネ。シーネ。シーネ!シーネ!!」
クラスメイトの1人が手拍子をしながらそう言うと、他のクラスメイトも連られて同じことをやり出す。
「シーネ!!シーネ!!」 「シーネ!!シーネ!!」
クラスメイトの声に、少年の中で何かが…崩れる音がした。 少年は俯いたまま、教室の窓からトンダ……。
「ばっ!マジかよ!!」 「本当に飛びやがった!!」 「俺知らねーぞ?」
少年が消えた教室から次々に声が聞こえる。しかし、その声はもう、少年には届いていなかった。
(はぁ。オレの人生もここまでか…。案外 呆気なかったな…。お母さん…お父さ ん…ごめんなさい…。今まで本当にあり がとう。心残りは妹かな…。あーあ。顔 みたかったな…。ダメなお兄ちゃんでご めんね。)
グシャッ!!! 4階という差程高くない教室から飛んだにも関わらず、少年の中では多すぎるほどの思いが巡った。
「キャー!!!」
誰かの悲鳴を最後に、少年は意識を手放した。