精霊たちのメサイア

18.大切な人

18.大切な人


家族意外と踊るのは初めてだし、心の準備も出来てないはで足が絡まってしまいそうだった。


「大丈夫だ」

「は、はい」


「大丈夫って何が!?私がどれだけダンスが苦手か知らないくせに!」と言えればいいけど言えるわけない。もう泣きたい。早々に両親の元へ帰っていれば良かったとこんな事になってとっても後悔した。

あれ?少しペース落としてくれた?

顔を上げると第一王子殿下は微かに笑った。


「礼を言いたかったが中々2人で話せるタイミングがなかったんで、この機会を利用させてもらった」

「礼……ですか?」


初めて会うのに何の?


「母を助けてくれたこと、心から感謝する。 ありがとう」

「お母様、ですか? あの……人違いではありませんか?」

「いいや、絶対に人違いではない。 黒い髪に黒い瞳のレイラと言う名の女性だったと聞いた。 アルポも俺の精霊も君で間違いないと言っている」


アルポって……。


「もしかして……お母様って、ペネロープさんの事ですか?」

「そうだ」

「え? あ、すみません、『ペネロープさん』なんて呼んでしまって! それにあの、こんなに大きなお子さんがいる様には見えなかったので驚いてしまいました。 重ね重ね申し訳ありません」


王妃様はいらっしゃるから側室様って事よね?それって王様の奥さんってことよね?それなのに軽々しく“さん”付けで呼んじゃうなんて……しかもあんなドタバタと帰っちゃったし……お礼といってるけどもしかして怒ってるのかしら……もしお父様とお母様、ヴァレリー家に迷惑をかけてしまったらどうしよう。

日本にいた時、特に母から言われていた“本当に1人じゃ何もできない子ね”という言葉がふと蘇る。身体の感覚が鈍くなっていく。まるで何かに囚われている様に。


「あっ__!」


足の力が抜けてしまいバランスを崩してしまった。でもまるで踊りの一部かの様に第一王子殿下が支えてくれた。


「少し付き合ってくれ」


どうやら踊りは終わった様で、曲が止まっていた。第一王子殿下の腕に手を添え歩き出すと、次の曲が始まり参加者たちが次々と踊りを始めた。

私は第一王子殿下と2人でテラスに出てソファーへと並んで座った。ドリンクを持ってきてもらい、リンゴのジュースを一口飲んだ。

沈黙が怖かった。何を言われるのか怖かった。

膝の上でドレスをぎゅっと握ると、クイクイっと引っ張られた。


「レイラー!」

「アルポ!?」

「うん! アルポだよ!」


アルポは飛んで私の膝の上に座ると、ギューっと抱きついてきた。


「ちゃんとお礼がいいたかったの。 ペネロープを治してくれてありがとう! レイラ大好き」


アルポが手を伸ばして、優しく涙を拭ってくれた。


「どうしたの? 悲しい?」

「違うの……元気になって良かったなって思ったら、安心しちゃって……」


解毒ができる力を持ってて、その力を使った。だからちゃんと治せたと思ってたけど、やっぱり心のどこかで本当に私にできたんだろうかって不安だったのかもしれない。


「それとね、王様に話してくれてありがとう! 今回は許してもらえたの!」

「王様? それはどういう事だ」


第一王子殿下にそう聞かれ固まってしまった。


「レイラは精霊王がとても大切にしている人間さ」


知らない女性の声が降ってきて顔を上げると、燃える様な真っ赤な髪の毛の上位精霊が居た。


「私は炎の上位精霊フレイム」

「初めまして、私はレイラ! 宜しくね」

「あぁ、宜しく。 我らがメサイア」

「メサイアだったのか!? もしやとは思っていたがどうりで……何故アルポが君を頼ったのか母と不思議に思っていたが理解した。 だが今回の母の件と精霊王がどう関わっている?」

「アレク、精霊は契約を交わしている者の願いを叶えるしその逆もある。 が、契約を交わしていない相手、例えそれがメサイアだったとしても調和に関する事以外でお願いをするのはご法度だ。 だが今回アルポはそのルールを犯してレイラに助けを求めたんだ。 普通なら許されることではない」


私の膝の上でシュンとするアルポの頭をそっと撫でた。お咎めはなかったかもしれないけど、もしかしたら多少は怒られたかもしれない。


「でも私は無理をしたわけではないですし、元々解毒をする力を持っていたので治療をしたまでです。 なのでアルファには私の意志でやった事だからアルポを怒らないでってお願いしたんです」

「精霊王は何と?」

「ものすごぉーく長いため息の後、『分かった』とだけ言ってその話は終わりになりました」


笑ってみせると、第一王子殿下からは申し訳なさそうな顔をされた。


「戦場に行ってばかりであまり王城にいなかった間に母は毒を盛られていた」


も、盛られた!?


「あ、あ、あの! そんなお話を私なんかにしていいんですか!?」

「構わない。 フレイムがこんなに簡単に姿を現すのは珍しい。 それ程レイラの事は信用しているんだろう」

「あの…いつ頃から……なんですか?」

「1年ほど前だ」

「そんなに前からですか!?」

「どんな毒かは分からなかったが魔法や色んな解毒剤を試しながらなんとか生きていた。 日に日に体力はなくなり、美しかった母の姿は見る影もなくなっていった」

「犯人は捕まったんですか?」

「……証拠がなくてな」


目星はついてるけど捕まえられないって事?


「遠征から戻って母の元を訪ねて驚いた。 まだまだ元に戻るには時間がかかるだろうが、それでも目には正気が戻り頬に赤みがさし、表情が明るくなっていた。 魔物狩りの時に君を見てすぐに確信した。 彼女が母を救ってくれたのかと」


第一王子殿下は私と目線を合わせる様に少し頭を下げ、笑った。

一見冷たそうに見えるけど、笑うと人間味が増すせいか優しく見える。ギャップにやられるとはこういうことを言うんだろうか。


「本当にありがとう。 何か礼をさせて欲しい。 欲しいものやして欲しいことはないか?」

「……私がメサイアだと内緒にして頂けませんか?」


今私が望むのはそれ以外なかった。だって私はあたたかい家族に囲まれて、何不自由ない生活をさせてもらえて、足りないものなんてないから。だからその生活を捨てることにならない様に生きたい。


「メサイアだと公表すれば国賓として扱ってもらえる。 それを望まないのか?」

「私今とっても幸せなんです。 本当に怖いくらい幸せなんです。 家族がいて屋敷のみんな、精霊たち……たくさんの人と縁を結べて、不自由な事は何一つないんです。 だから国賓なんて立場要りません」

「そうか…分かった、約束しよう」


手を出されて、これは!と思い私も同じように手を出して親指の腹を合わせた。


「王子殿下、感謝いたします」

「これは礼にはならない。 困った事があればいつでも頼ってくれ」

「……ありがとうございます」

「それと、王子殿下じゃなくアレクサンダーもしくはアレクと呼んでくれ」

「ではアレクサンダー殿下と呼ばせていただきます」

「いや、殿下は必要ない」


どうして?この国の王族は敬称が嫌なわけ?なんで?


「公式の場以外ではアレクサンダー様と呼ばせて頂きます」

「……まぁ、いい。 今はな」


ずっと呼び方は変わらないんじゃないかな。と思いながらも笑って誤魔化した。





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