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「どうして愛子を助けたの」


病院から出た時、夢は不服そうな顔でそう聞いてきた。


「言ったでしょ。見ていて助けなかったらあたしたちは犯罪者になる」


嘘ではなかった。


愛子が苦しみながら死んでいったって、あたしには関係ないと思っている。


「そうだけど」


夢はまだ唇を尖らせている。


目の前で愛子が苦しみながら死んでいく様を見たかったのかもしれない。


それからあたしたちはいつものファミレスに移動してきた。


ファミレスは軽いボヤで済んだようで、当日から通常通りの営業が行われていた。


夢はすっかりお気に入りになったパンケーキを注文して、あたしはドリンクバーを頼んだ。


「お腹空いてないの?」


サイダーを飲んでいるあたしを見て夢は不思議しそうな顔で聞いてきた。


外はオレンジ色に染まっていて、そろそろお腹が減ってくる時間帯だ。


「家に帰ったとき晩ご飯が食べられなくなるからだよ」


あたしは適当な嘘をついた。


本当はこれから始まる損失について考えていたのだ。


ついに死人が出てしまったから、そのことが頭の中にわだかまりとして残っているのだ。
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