愛がなくても、生きていける
歩けば歩くほど、徐々に視界は涙でにじみ、目を埋め尽くした雫がぽろりと頬を伝って落ちた。
よかった、辰巳の前では泣かなかった。
私、ちゃんと笑えてたかな。
これまで言えなかった気持ち、ちゃんと伝えられていたかな。
この恋を終わらせることは、きっと簡単じゃない。
まだまだ時間はかかるだろうし、何度も胸を痛めるだろう。
だけどいつか、この日のことを笑える日がきたら、今日の私を好きだって胸を張って言えるだろう。
恋する幸せも失恋の痛みも、彼がいたから知ることができた。
そしてその日々が、未来の私を強くする。
涙を拭う右手に握った、スイートピーの花。
花言葉に込めた想いは、彼の門出を祝う気持ちと、蝶のように飛躍する未来を願うもの。
そして、もうひとつ。
彼に向けた花言葉。
『優しい思い出を、ありがとう』。
end.