いつものように、私がお湯を貰いに行くと、給湯器の前に佇む一人の小柄な女性がいた。
 シルクだろうか、いかにも上等そうな白いパジャマを着た女性が、ゆっくりと丁寧に、給湯器のお湯を使って、コーヒーをドリップしていた。
 その、病院に似つかわしくない出で立ちと所作に、しばらく私は見とれていた。
「すみません、占領してしまって」
 その丁寧で美しい声に気がつくと、私の方を見る、とても綺麗な顔があった。
 綺麗というよりも、可憐な少女のようなその顔には、とても澄んだ瞳があって、その瞳に、私は一瞬にして心を奪われる。

「いえ、いいんです。ごゆっくりなさってください。」
「すみません、ありがとうございます。」
「・・・、コーヒーお好きなんですか?」
「え、」
「いえ、とても丁寧に煎れてらっしゃるから。」
「ええ、好きなんです。でも、病院でドリップコーヒーは可笑しいですね。」
「そんなことないですよ。インスタントとドリップでは、全然味が違いますもの」

 そんな会話から、私達の交流が始まる。