冬に花弁。彷徨う杜で君を見つけたら。

ギャラリスト女子旅に乱入して首輪か?

チョウコとキコと、リンネが
朝食を終えて、
母屋から外へ出ると、

丁度白のオープンカーが
農家民宿の駐車場に止まった。

流石に冬場の山では
寒いのかシェードは下りている。

出て来たのは、
タレ気味の目をした 白スーツの
男で、

その人物を見たキコと、リンネが

「「ハジメさん!」くん?!」

同時に叫んで、
3人が顔を見合わせた。

!!!

オープンカーから降りた
白スーツの男も 驚いた表情で、

「あれぇ~?あれれぇ~?」

しか、しゃべらない。

チョウコはそんな3人を見て
キョトンとしている。

白スーツの男はふとキコを見て、

「あ~~~!そうかぁ!うぁ~、
1人じゃあなかったんだぁ~。」

いきなり、1人で納得している。

???

「とにかくさぁ、ここわぁ、
レディドールにまず~、
挨拶するよん~。ご機嫌は?」

そう言うと恭しくまるで
王子が、ダンスを誘うような
ポーズを取る。

「 冗談はやめてくださいね。
ハジメさん! お2人に紹介を
します。わたしの作品を扱う
ギャラリーのオーナーで、
ハジメさんです。今日、
打ち合わせだけ予定してまして」

リンネが言うが早いか、
ハジメは人懐っこい笑みで、
チョウコと 、、キコにも
名刺を手渡す。

そこにはギャラリー名で

『 武 々 1 B 武久 一 』と

印刷されていて、

「 それでぇ、キコちゃんとはねん
前職での知り合いぃ、ボクの
親友の、ダーリンだよん~。」

ハジメは自己紹介すると、
レディ達ヨロシクと、ウインクを
投げた。

チョウコが、うへぇ顔をするのを
横目に、ハジメは
リンネに聞いてくる。

「でぇ、レディドールは~?
彼女達とシェアリゾートぉ?」

「 そのようなものですかね。
明日に朝から 古道を歩く予定
をしてます。けど、キコさん
お仕事とか、お家とか大丈夫
ですか?連絡して下さいね。」

遭難はしないつもりですけど、
と言いながら、キコの表情から
さりげなく
ハジメを、山小屋へ促す。

「 ほなら、ちょこっと電話
させてもらうわ。あ、ハジメ
くん、うち今 ほらOBの山内
さんとこでお世話なってるん
やわぁ。また、後でなぁ。」

キコは、チョウコとリンネに
電話を振って
このまま外でかけると
席を外す。

「 ならー、あたしはリビングで
装束の試し着でもしとくなー。
ほんなら、ごゆっくりー。」

チョウコも手を振って山小屋に
入っていった。

「 世間てぇ、狭いよねん。まさか
キコちゃんに会うとはビックリ
だよぉ。そうかぁ、なら間違い
ないなぁ。面白いねん。ふふ」

ハジメは口を弓なりにして、
顎を手で撫でる。

「 何の話ですか?打ち合わせ、
例の夏の芸術祭で オーダーが
あった件でしょ?あ、作品!」

話ながらリンネとハジメも
山小屋に入って、
1階のリビングとは別に2階へ
上がる。

「 もう!!ハジメさん!あれ、
何ですか!友達とかSNS教えて
くれた時驚いたんですよ! 」

リンネは 2階のドアを開けて、
自分の電話を表示する。

そこには、
等身大のリンネの作品人形と
イルミネーションの中
写真撮影するハジメが
アップされていた。

「 あぁ!!それ!すごいよねん。
あっという間に話題になった
よん。今ちょっとしたぁブーム」

ハジメは、イタズラが成功した
子供の顔でリンネを見返す。

「 もう!この子だって、本当は
オーダー受けるつもりなかった
子なのに!酷いです!晒すとか」

どーしてくれるんですか!
とリンネは怒りながら
部屋のデスクチェアに座る。

「 あれぇ?これって~。夏の時の
デスマスクだねん。持って来て
たのん~?いつもは、、、」

ハジメはそう言いながら
部屋を見回す。
部屋には何体ものドールが
鎮座している。

「 ええ、いつもは ここに前作品を
持ち込まないのですけど。
ハジメさんが、こっちに来るって
伺ってたので、使うかなと。」

ハジメは、部屋の真ん中に
あるソファーに座して
テーブルの『デスマスクアート』
を手に取る。

「 なんだかねん。いろいろな
事が、昨日みたいに思える~。」

思えば、このデスマスクが
着ていた装束も 使ったんだ~。
と懐かしげにして、

「 それなんだけどねん。レディ
ドール。このデスマスクアート
からぁ~、ベネチュアの仮面を
オーダーもらったゲストだけど」

ゆっくりマスクをテーブルに
戻すと、ハジメは
リンネを見つめる。

「 えっと、確か 海外ゲストの
マイケル・楊令嬢ですよね。
夏の芸術祭では、行き違いに
なってるので、お顔は拝見して
ないですけど。違いましたか?」

リンネは、ファイルを取り出して
オーダー表を改めた。

「ちょっとねん、打ち合わせぇ、
待ってもらっていいかなぁ?」

ハジメは緩いパーマ髪を
かき揚げて、息をつく。

「 まあ、こんな新型ウイルスが
まだ終息してませんからね。
かまいませんよ。いつもの
作品と違ってイレギュラーな
作品作りになりますから。」

気にしませんよ、と
リンネは デスクから立ち上がり
コーヒーをドリップして、
ハジメの前に置いた。

「 わぉ~、ここってさぁ、
やっぱり水が良いからかなぁ?
コーヒーの薫りからして
全ぇ然ん~違うよねん。はあ」

良い薫りぃ~と、ハジメは
嬉しそうに口にカップをつける。

「 悪いねぇ。あとねぇ、お願い
あるんだけどぉ、いいかなあ?」

「 何ですか?もう、また無理
言わないで下さいね。芸術祭も
本当は、出るつもりなかったのに
アーティストの交流とか 無理に
連れ出されて、困りました!」

リンネが警戒の目で、
ハジメを睨む。

「 いやだなぁ。普通にぃ~
恋のキューピッドをしている
だけなんだけどなぁ~。まあ、」

それは、置いておいてと、
ハジメはリンネに
真剣な眼差しで 言い始める。

「 これからぁ、あの2人とぉ
出掛けるならぁ、必ず連絡を
してくれないかなぁ。出来たら」

此れを持って欲しい。
と、出されたのを見て
リンネが 驚く。

「これ?!なんで?!です?!」

ハジメは、無邪気に
圧を強めて、

「GPS機能付きでぇ、つけて~」

小さい、キッズ電話を
リンネに押し付けた。



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