未来の種
それに対して、私は誰かが歌うための伴奏が好きだった。
小学校の学内コーラスコンクールで伴奏を担当した事から、将来は音楽の教師か、幼稚園の先生になりたい!と思うようになった。
それが今の職業に結びついている。
いつかきっと、優も紫おば様のような世界的なピアニストになる。誰もがそう信じて疑わなかった。

国立芸大のピアノ科に進んだ優は、国内のコンクールで次々と賞を取っていった。

父親譲りの長身痩躯の体型に、母親譲りの色白の肌。ココアブラウンのさらさらの髪のを持つ優は、CDデビューも果たした。
優の王子様のような写真を載せれば、ジャケット買いする購入者も沢山いたみたいだ。
そんな優が私の自慢だった。

大学在学中から華々しい活躍をしていた優。
卒業後はアメリカへ留学することが決まっていた。
留学すれば、そう簡単には会えない。
優はせめて大学在学中だけでも、2人の時間を持ちたかったのだと思う。もちろん、私も同じ気持ちだったから、大学在学中はべったり2人の時を過ごした。

この先、離れ離れの期間は長いだろう。一緒にいられる日が来るのかどうかもわからない。だからと言って、別れるという選択肢はなかったのだけれど。

でも、卒業間際の検査で、私の気持ちは大きく変わったのだ…。







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