未来の種
美衣子の想い
「『私じゃない誰かと幸せになって』って、そういう意味だったのか…。」

私の長い告白を聞き終えた優は、静かにそう言った。

「……うん。ごめんね。どうしてもあの時は言えなかったの。私自身が自分の体のことなのに、まだ受け入れられていなかったから。」

「……俺、嫌われたのかと思った。昇ちゃんに言われたんだ。俺がちゃんと約束の言葉を言わなかったから、愛想尽かされたんじゃないかって。」

「え、まさか!
そんなわけないじゃない。」

「そうか? だってミイ、遠距離は無理とか、気になる人が出来たとか言ってたし。」

「あ…。そ、そうだった。ごめん…。
いや、それより、そういうことじゃなくて!
今言ったように、私は子供が産めるかわからないの! 内膜症に卵管閉塞にAMHの問題。腹腔鏡手術はしたけど、いつまた詰まるかわからないし。優の子供が産めないかもしれないの。でも私はいいの! うちはね、鉄ちゃんのところにもう2人子供がいるし、昇ちゃんのところにも、直に出来ると思う。でもでも、優のところは優1人だから、ご両親も優に子供が出来るのを楽しみにしているはず。それに、坂上家は優だけでしょう? 相手が私じゃなかったら、子供、出来るんだよ? だから…」

「ミイ、落ち着いて。」

「落ち着いてるよ! 
優が事の重大性をちゃんと理解してないみたいだから説明してるんじゃない!」

「わかった。わかったから。
ちょっと俺に喋らせて?」

「……。」

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