すてきな天使のいる夜に〜2nd Sstory〜
ーside 紫苑ー



過去と向き合ったあの日以来、沙奈は少しずつだけど、縛り付けていた過去から自分を解放し、自分の気持ちを話してくれるようになってきた。



その心の変化が、素直に嬉しいと思う。




まだまだ、心配な事はたくさんあるけどこれからもずっと見守っていこうと思う。



あの日から、月日は流れ沙奈は高校3年生になっていた。




出席日数はずっとギリギリではあったけど、病気と上手く付き合っていきながら無事に3年生を迎えることができた。




そんな沙奈の成長も嬉しいけど、沙奈の進路のことも心配になる。



前に、沙奈に将来の夢を聞いた。



だけど、これといった夢はなくて沙奈は俺達から自立できるようにと就職の道を選んでいた。




本当に、それでいいのか。



俺達のことを考えて、その道を選んでいるとしたら…。



「沙奈、話があるんだけどいいか?」



「うん。」



「沙奈は、高校卒業したらどうしたい?」



沙奈は、少し考えて話し始めた。




「これといって、なりたいものがないの。


だから、何でもいいの。


私ね、昔は今を生きることに精一杯で未来のことなんて何も考えてこなかったの。


だから、分からないの。


自分のなりたいものが。」




そう言って、沙奈は寂しそうに笑った。



「沙奈…。」



「あまり、心配しなくて大丈夫だよ。


とりあえず、色んな会社の募集要項見ながらちゃんと決めるから。」



それ以上、何も触れないでという表情をしていた。



この表情をされたら、もうそれ以上は何も問うことはできない。



沙奈が「大丈夫」と言うほど、自分を追い詰めている気がして、いつだって大丈夫なんていうことはなかった。



だけど、今沙奈の考えていることをすぐに聞かない方がいい気がした。



もう少し、タイミングを見ながら沙奈のサポートができるようにしよう。





「何かあったら俺や翔太に話してね。」



沙奈は、頷いてくれた。



それから、俺は沙奈の小さな頭を撫でてから部屋に戻る姿を見守った。



沙奈の話した言葉が、心に引っかかる。



さっきの言葉は本心とも思えなかった。



出会った頃から、沙奈は何か悩み事や隠したい事があると目を合わせて話すことができない。



沙奈は基本、人の話を聞く時には必ず目を見て話を聞くし、目を見て話すことのできる子だ。



さっきも、そんな様子だったからきっと何か悩みがあるのかもしれない。
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