「まじか・・・」

私、矢野美織(やのみおり)は駅のホームで絶句した。

なぜなら・・・

「この駅、ホームにエレベーターないっすよ?」

そう、エレベーターがないからだ。
親切な人が通りがかりに教えてくれた。

「みたいですねー。」

私は冷めた声でそう答えてそびえ立つ階段を見上げる。
腹を決めた。
やるしかない。

そう、1歳になった咲良(さくら)とベビーカーと、一緒に階段を登ることを。

咲良を抱っこして、ベビーカーをたたむか。

「あ、手伝います、手伝います。」

さっきの親切な人がまた声を掛けてくれる。

「大丈夫ですー。」
「いや、大丈夫じゃないでしょ。」

階段前。
その人の顔を初めてちゃんと見た。

あ。
お互いに目を見開く。

「美織!?」
「笹崎!?」
「うわー、まじかよ!」

最後に会った高3から彼は変わってなかった。

笹崎と私は、高校3年間、同じクラスだった友達だ。