2番目の恋
と、遠くからドーンと音がした。

ドーン。

咲良が少し驚く。
どこ?どこ?と首をフリフリする。

「笹崎はなんだかんだモテるよね。」

私は咲良の頭を撫でながら言う。

「でも好きな人には振り向いてもらえたことがないんだよな。」

私は咲良の顔から笹崎の方を見る。

ドーン。

視界の端で小さく花火がパチパチ上がってる。
音ばかり大きくて、大袈裟。
小さいくせに。

誰もいなくなった土手沿い。
電灯と電灯の間は暗い。

「今も。」

笹崎が私を見る。

「え?」

ドンドン立て続けに大きな花火が上がる。
だけど煙なのか雲なのか、重なって見えにくい。

「俺はもうそろそろ限界かも。」

急ぎ足で私たちを追い越していく人たち。

「何が?」
「こうやってただ美織の隣歩くだけっていうのが。」

アパートはもうすぐそこまで来てる。

「そうなんだ。」

咲良が眠くてグズグズし始めてる。
私はベビーカーのベルトを外す。

花火の音ばかり鳴り響く、薄暗い夏の夜。

私が咲良を抱っこすると、笹崎が慣れた様子でベビーカーを押し始める。

「ほら。」

笹崎が笑う。

「花火大会はロクなことがない。」

少し、花火の音に掻き消された笹崎の声。

でも痛々しい笑顔にすべて表れていた。

その後、笹崎とはアパート前で別れた。
花火はその後2時間も打ち上げられた。

うるさかった。
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