2番目の恋
水族館についても咲良はベビーカーに乗るのを嫌がった。

一番の見所の大水槽前でも咲良は魚を観ることなく通路を走って行く。

「ちょっと咲良ー」

私が追いかけようとすると、笹崎が手で軽く私を抑えて自分が咲良を追いかけた。

私は水槽の中の色とりどりの魚たちを眺める。
こんなに綺麗な魚たちが海の中にいるんだろうか。

私はこんなに綺麗な世界が、この世のどこかに存在することをまだ信じきれないでいる。

途中、簡単なフードコートに出る。

「なんか食べるか。咲良何食べる?」

笹崎が咲良に聞くと、咲良は「ちゅーちゅ!ちゅーちゅ!」と言う。

私が通訳する前に笹崎が「つるつる?うどん?」と答える。

咲良は嬉しそうに「ちゅーちゅ!」と手足をバタバタする。

私はラーメンを、笹崎はカレーを注文した。

ペンギン達が滑らかに泳ぐのを眺めながら食べる。

咲良が水の入ったコップをひっくり返す。

「あーもう」と私が席を立つと、笹崎が笑って「まあまあまあ」と言う。
そしてダスターを持ってきて手際良く片付けて行く。

「洋服濡れなくて良かったな。」

そう言って、私を見て笑った。

笹崎はいつだって優しい。
誰にでも優しい。
いつも穏やかで笑っててムードメーカーで態度を変えなくて。

すごくいいやつだ。

正直、なんで私なのか、不思議になる。

私は人間的にそんなに出来てない。
だから離婚だってした。

ずっと相手のせいにしてきたけど、たまに自分に非があったのかと思う。
私だったから彼は態度を変えたのかな。

幸せな日は続かないし、好きな人からは好かれない。
モテても幸せにはなれないと知った。

< 28 / 40 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop