白き髪のガーネット【改訂版】
第3章
【ガーネット13歳】

キィンッ!キィンッ……!!

ここは離宮の訓練場。辺りに響く金属音。
容赦なく斬りかかってくるメルの刃を私は懸命に受け止めながら、反撃の隙を伺う。

メルは侍女でありながら将軍職に就く父親の元、幼い時からあらゆる武術の手解きを受けていた。
そこら辺の男なんかじゃ相手にならない位に強くて、そういう面でもクー兄様から頼りにされて、ついに離宮を管理する侍女長に就任した。

そして……。私の世話役でもあり、今では様々な事を教えてくれる先生。

「やあッ……!!」

剣を弾き、メルが体勢を整えて構える間の一瞬の隙を突いて斬り込もうとした。

……けれど、やはりまだメルには敵わない。
メルは剣を捨てると素手で私の手を止め、手首を掴むとグイッと後ろに捻るようにして押さえ付けてきた。

「いッ……!」

私の手から剣が離れ地面に落ちると、メルはその剣を足で踏み、勝ち誇ったように微笑む。

「まだまだ、ですね。ガーネット様」

メルはゆっくりと手を放すと、剣を拾い私に差し出す。

「ハァ……。
今日こそは!って思ってたのに……」

剣を受け取り、拗ねたように呟きながら休憩場所の木陰に入る。
私はどうも猪突猛進のようだ。
剣を持つとどうしてもそれで戦おうとしてしまって、他の戦法をとっさに考える事がまだ出来ない。
さっきのメルのように自ら武器を捨てて、体術に切り替えるという起点が効かない。

今は稽古だからいいものの、実際の戦場では一瞬の判断が命取りになる。
こんなんじゃクー兄様と一緒に戦場に出るなんて、夢のまた夢だ。

「そんなに気を落とす事はありません。
ガーネット様の成長は正直、私には予想以上ですよ?」

落ち込む私にそう言って、メルは笑顔で水の入ったコップを渡してくれる。
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