白き髪のガーネット【改訂版】
第5章
【ガーネット16歳】

久し振りに夢を見た。
それは幼い頃、時々見ていた夢。

真っ赤な辺り。
そこはおそらく戦場で、武装をした人や馬に乗った人が戦っている。
剣と剣がぶつかり合う金属音、歓声、怒鳴り声、悲鳴。

私は誰かに守られるように、抱き締められていて……。
でも、何が起こっているのか気になって……。
その腕の隙間から、見てしまうの。


いつもならそこで目が醒めて、ハッキリとしない夢の続きが……。
初めて、その先が見えた。

腕の隙間から覗いた、その瞬間。
私の瞳に映るのは戦い合う、二人の男性の一騎討ち。

青い髪の男性の剣が、紅い髪の男性の左肩を貫くの。

青い人の、勝ちーー。

そう、思った。

……でも。
でも、ね……っ。

……
…………。


「……ネット……ま。……ガーネ……様?
……、ーーガーネット様ッ!!」

名前を呼ばれて、私はハッとした。

「お疲れでございますか?ガーネット様」

椅子に座って、前のテーブルに頬杖をついて寝ていた私に声をかけてくれたのはメル。

「っ……、ごめんなさい。
少し休憩を、って思ったらつい寝ちゃったみたい」

心配そうな彼女に舌を出して微笑むと、私は自分の今の状況を思い出した。

私が今居るのは、水の国に近い場所に造った炎の軍が滞在する砦。
これから始まる水の国との戦に備えて進軍しやすいように、ゼアス様が築いた砦だ。


炎の国と水の国は昔から対立していて、未だにその(わだかま)りが解ける事はない。
今から10年くらい前に、炎の国は一度水の国の砦を落としたのだが、本土までは攻め込めず失敗に終わり……。その際に生き延びた王子を有能な家臣達が(かくま)って密かに育てていたという話。
今はその生き残りの王子が水の国の王となり、同盟国の風の国達に支えられて勢力を伸ばしている。
全ては炎の国に復讐する為にーー。
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