私の好きな彼は私の親友が好きで
不協和音

入社式を明日に控え、夕食後、ソファーで寛いでいる時に
「美月、明日から朝は一緒に出社するつもりで準備してね」
「・・????・・」
「高遠ホールディングスと飯島コーポレーションは地下道で行けば
5分も掛からないからね。」
「はぃ~?言っている意味が・・」
「だから、明日から美月は俺と一緒に迎えの車に乗って、会社に行くの♡
夫婦で出勤って良いよね~」
「待って下さい。私、新入社員です。運転手付きの車で出社したら
それこそ、入社前に飯島美月になった意味が無いじゃないですか」

その言葉に少し不機嫌そうな顔を見せる薫さん。

「じゃあ、飯島美月になったのは会社での名前が理由なんだ・・」
(いやー違う・・でも、拗ねている薫さんも素敵だ・・)
そう、一人でニヤニヤしたら、ソファーに凶悪な眼をした薫さんに
押し倒される・・・
「違います。薫さんが好きだからです!」慌てて口にすると
ニッコリ笑い、キスを唇の端に落してくれる、絶妙なキス・・
私がキュンとするところを知っている、意地悪な人。

「だから、美月は俺の会社で車を降りて、歩いて高遠に行けば
誰にも気づかれない。流石に帰りは一緒には帰れないけれど、
飯島に戻って車に乗って帰りなさい。」
「はぁ~」
「どうして溜息?」
「車で送迎の新入社員なんて、給与よりそっちの方が
高くつく通勤なんておかしいです!私は電車かバスを使います。」
「え、そんなの心配だよ。」
「大学にだってちゃんとバスと電車で通学していました!
そもそも、小学校の時から電車で通学しているんです。大丈夫です!」
「それは知っているよ、知っていて何も出来なかったけれど、今は出来る。
だから  ね?」
(たまぁに薫さんは不思議な表現をする。別に大学生が電車に乗るのに
そこまで心配になるような事は無いんだけれど・・)
「お金云々で言うなら、朝、同じ所に行くのに、わざわざ別に行かなくても
良いんじゃない?それに、美月の仕事が忙しくなったら、
俺が忙しい時に朝の通勤時にコミュニケーションが取れて、一石二鳥だよ。」

確かに・・でも、私が飯島コーポレーションの中をチョロチョロするのは・・・
その気持ちを察したのか、
「はい、これ」と差し出されたのは、海外ドラマで見る、軍人さんが
胸から取り出して、愛する人に託したりする認識票のような物。
「これは、うちの会社の一部の幹部だけのパスだ。ネックレスタイプで
服の中でも認識される。ゲートを通るのに必要だから、
会社に行く時は必ず、首から下げていて。そのうち、
高遠の幹部にも導入する予定だ。」
「解りました。じゃあ、朝だけは一緒に。帰りは電車で帰ります。」

少し不服そうな薫さん・・・
切り出しても大丈夫かな???少し心配だけれど・・・
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