モカ
 その日も、8時ごろ家を出た。少し風が強い。30分くらいのいつものコースにさしかかろうとした時、
「みひゃー、みひゃー」
 ねこらしき鳴き声が聞こえた。
 何かを伝えようとしてるみたい。のどから絞り出すような声をあげている。
「お願いだ。ボクを助けてぇっ」
 生後、何週間ぐらいだろう?やっと子ねこという感じ。
 子ねこは、みひゃ、みひゃ鳴いている。
「なんでだろ、一番初めに生まれたリーダー気取りのこのボクが、ちくしょう」
「そんときは幸せだった・・・・・・あったかい毛布にママのおっぱい、確か7人兄弟だったと思うんだ」
「それにしても、なんだか、歩きにくいんだ。なんでだろ」
「それに、ほかの奴はボクを見ると逃げるようになったんだ」
「今まで優しかった人間までボクを避けるんだよ」
「まいっちゃったよ、ボク」
 まとわりつく子ねこ、美紀は目を丸くした。
「こんな人なつっこいねこ見たことない。それになんか必死だ」
「無邪気じゃないか、それにヨロヨロ、なんでそこまであたしにすりよるんだよぉ」
 美紀は、そいつを抱き上げようとした。
「あっ!」
 息をのんだ。
「お前、片目がヤバイよぉ」
 よく見てみると、片目の眼球がはれ上がり、もう目から落ちそうだった。
「どうしたらいいんだ、このままだと、死ぬかなぁ・・・・・・」
「いや、ウォーキングに来たんだからねっ!」
 そのまま行こうとした。へんっ、3歩目に振り返っちゃった、はーん。
 そしたら、そいつ、まだヨロヨロついてきてる。
「こっちがまいるよぉ」
 しゃがみこんだ。
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