明日から8月だ。いつも、月が変わる前の日は、少しだけワクワクする。年末感に似たもので、新しい月に何か期待しているのだと思う。新しい日々や、小さな変化なんかを。だけど今日は違う。今夜だけは――。


律の部屋にいるから。
それと――。



「会えない?」


「…今、から?」



電話の向こうの円の声はどよんと暗い。
相談したいことがあると電話が掛かってきたのはつい先程のこと。
テレビゲームに夢中な律を部屋に置いて、慌ててベランダに飛び出したのだ。


「ムリ?」


「……」


「そうだよね。こんな時間だし、ごめんね。突然」


こんな時間だから、心配なんだ。行きたい気持ちも山々で。
だけど――。


チラ、と室内に目を向けると、律の後頭部が目に入った。



「ゆめ?」


「…なにが、あったの?」


「ああ、うん…会った時に話したいかも」


「…わかった」




****



「誰から?」


「円」


「ふうん」


律には、心がないのだろうか。
円の名前を出しても、関心を見せずテレビゲームに夢中だ。
その様子に呆れていると、不意に、手の中の携帯が震えた。



「……」


通知に記されている名前は円で、内容は――。



―律、浮気してた―



「――!」


大きく目を見開いた。
バレた。とうとうバレたんだ、この関係が。
ドクドクと鼓動が早まり唇が震える。
どうしよう、どうしようどうしよう。


こうなってしまってはどうしようもないのに、どうにかすることばかり考えてしまう馬鹿な脳みそ。果てには涙まで込み上げる始末。どう考えたって、悪いのは自分なのに。