カレシとお付き合い 番外編2
✳︎



私は占いなんていつもは見ない。

その日、たまたま朝のワイドショーがついていて、大学に出かける前に、なんとなく画面を見てしまった。

星占い。

最下位⋯⋯ 。

『残念!今日のガッカリさんは?』と、アナウンサーの明るい声が頭に響く。

私の星座だった。

思わず画面を見たら、
『信頼している人に裏切られる』
なんて、書いてある。

森君⋯⋯ 。

3日前の彼の姿がよぎる。
あれから、ずっと私は真っ暗な世界にいるみたいになっていた。
森君の姿がよぎって、ナイナイって自分で打ち消して、また刺されたみたいな痛みに苦しむ。

見間違えなら。

でも、見間違える?

何度もメールで聞こうと思いながら、勇気が出ない。
きっと何でもない事なんだろうって。
聞いたら、なーんだ、って。

でも、

そのでも、って思う一筋の疑念がこわくて。



✳︎

3日前、久しぶりに森君と会う約束をしていた。

大学が始まってしばらくしてから、全然彼の時間がとれないらしくて、長い間会っていなかった。

最初は電話をしたりしたんだけど、まだ講義中だったり、ホントに図書室にいたり、メイワクをかけちゃってから、なかなかかけられない。

だから、すごく楽しみでフワフワと数時間前に待ち合わせ場所に行ったんだ。

そしたら[ごめん、家の用事で急に出れなくなった]って。
家の用事ならしょうがないよね、って思ったし、メールでもそう送った。

納得して、でも寂しい気持ちが納得しなくて、つい彼の家の駅まで行ってしまった。

遠くからでも会いたいな、なんて。
驚くかな、迷惑かな、って。

ドキドキしながら改札を出た。
出てどうしようとか、あんまり考えてなかった。

勢いできちゃったんだ、駅。

改札を出て、目をつぶって息を吸い込む。
森君のいる場所に近い、そう思うと空気まで違って感じるな、なんて、思って、目を開けたら⋯⋯ 。

私が見てしまったのは、家族と用事のはずの彼が、すごく美人な背の高い女の人と2人で歩いている姿だった。

2人のまとう空気が、あまりに親密で⋯⋯ 。

見た目が一対のセットみたいにお似合いで⋯⋯ 。

私は言葉が出なかった。
「森君じゃないかも」と呟いて、あの人は森君だと確信していた。
2人は私に気がつかず、そのまま歩き去った。
私はぼーっとして、それから現実感がない。

✳︎



星占いなんて見ないし、信じた事もないけど、『裏切り』って言葉が覆いかぶさるみたいに感じてしまう。

一応⋯⋯ ラッキーアイテム、黄色い物を身につけよう、って、とっさに家の棚に置いてある黄色い物、ヒヨコの大きなキーホルダーを握りしめてしまった⋯⋯ 。

気にしてない、ぜんぜん!



駅について電車に乗った。

いつも電光版なんて見ないんだけど、たまたま立っているところから、戸口の電光版が見えた。

ニュース、株価、天気、
(へー、)
と思って何となくみていたら、

うわっ!

また!

星占い、なんで⁈

しかも、やはり最下位、アンラッキーな日。

うっ、と思って窓から外を見た。

まさか星占いって、天気予報みたいに、公式の一致した物がちゃんと流布してるの? 根拠があってホントに起こる事なの?
いつもいい加減に聞き流してたけど、まさかね。



改札を通って、いつもの乗換道を歩く。

3パターンぐらいの道順がある。

いつもは地上で外を通る道が好き。
でも今日は曇りだったので、屋内の道を何となく歩く。
いま、この左の階段から地下に降りても行けるんだけど、今日は占いもイマイチだったし、何となく道幅が広くて綺麗な方の通路を行って、後から地下に下りよう。
めげずに頑張ろう!

気持ちよく歩いて、さぁ、地下に下りる。

エスカレーターで下って、ちょっと真っ直ぐ行って、

って!

うそ!

柱の電光版で、いつもはお洒落なCMが流れているのに!

柱一面に、1位から12位の今日の星占いが出てる!

こんな画面あったっけ⁈

やだ、気にしない、と思ったのに、思わず1番下に目が行ってしまった、うっ、やっぱり、最下位だよ⋯⋯ 。

しかも、『裏切り注意』って書いてある。
ラッキーカラー、黄色⋯⋯ 。

ちらっと鞄に押し込んだアヒルを見た。
何となく出して鞄につけた。

なにこれ。

他の星座が全く同じ順位だったりするのか、そこまでわからないけど、少なくとも私の今日の運勢は、最悪そうだ。

気にしなくても見てしまったらやはり気分が落ち込んでしまう。

単純すぎよね。

えーん、気にしないよ。



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