契約結婚のはずが、極上弁護士に愛妻指名されました
和臣の戸惑い
「新婚生活は順調そうだねー、瀬名ちゃん」

 音川との打ち合わせ終わりの相談室で、唐突に声をかけられて、和臣は思わず眉を寄せた。
 普段は優秀な尊敬すべき先輩であるこの音川が自分を"瀬名ちゃん"と呼ぶ時は、からかわれる時だとわかっている。
 和臣は、

「まぁ、そうですね」

と曖昧な返事をした。それで音川が見逃してくれるとは到底思えなかったが。

「いやしかし、意外だったよな。まさか瀬名ちゃんがプリンセスのハートを射止めるとは! 一番興味がないような顔をしてたくせに」

 案の定、音川は少し不機嫌に答えた和臣などまったく意に会する様子もなく、心底驚いた風で言って、意味ありげに和臣を見る。

「皆、地団駄を踏んで悔しがっているじゃないか。やっぱりお前は策士だな」

「策なんかなにもありませんよ」

 和臣はため息をついて音川を睨んだ。
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