契約結婚のはずが、極上弁護士に愛妻指名されました
土曜日の昼下がり
 土曜日の昼下がり、渚は大きな窓から見える都心の街を眺めながら、キッチンに立っていた。先週はうんざりするくらいの雨続きだったが、今日の空は気持ちいいくらいに晴れ渡っている。
 リビングでは、和臣がどこかくつろいだ様子でテレビを見ていた。
 渚は彼に視線を移し、少し落ち着かない気持ちになった。もちろんここは彼の家なのだから、彼がこうしていてもなにもおかしくない。
 でも土曜日のこの時間に彼が家にいるというのは珍しいことだった。
 和臣の毎日の生活は渚が想像していた以上に忙しいものだった。事務所と裁判所を行ったり来たりして誰よりも精力的に弁護士活動に打ち込む傍ら、週に何回かはテレビへも出演するのだから休日などあってないようなものなのだろう。
 週末も大抵は家にいない。
 渚の方も平日は仕事に専門学校にと忙しい生活が続いているから、同居を始めたとはいえ、ふたりは普段はあまり顔を合わせることがない。
 だからこんな風に家でふたりきりで過ごすのは同居を始めた日以来のことだった。
 渚の和臣に対する気持ちは、少々複雑だった。
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