契約結婚のはずが、極上弁護士に愛妻指名されました
和臣の誤算
 渚と見合いをした週末が明けた月曜日、佐々木総合法律事務所内の自らの個室で、和臣はパソコンの画面を見つめていた。
 時刻は午後の十時を過ぎた頃。
 当然事務室には誰もおらず、おそらく同僚弁護士たちも数人が自室に残っているだけだろう。
 パソコン画面の中はカタヤマ弁当の土地と建物の不動産登記情報が映し出されている。
 もとの持ち主は、片山幸子(かたやまさちこ)。おそらくはこれがカタヤマ弁当の店主だった渚の祖母だろう。三年前の日付で佐々木典子(ささきのりこ)つまり渚の母親名義に相続されている。
 グランドホテルのラウンジで結婚を決めた後、渚とは今後について詳細な打ち合わせをした。その渚の話では、祖母が亡くなった半年後に母親も亡くなったと言っていた。
 つまり祖母の分の手続きについては速やかに行われたのに対して母親の分についてはそのままにしてあるということだ。
< 79 / 286 >

この作品をシェア

pagetop