おとぎ話の裏側~身代わりメイドと王子の恋~

寝起きは良い方ではない。
いつもスマホのアラームなしで起きれた事がない。

無音の中、梨沙は珍しくスッキリと目が覚めた。
いつもの朝と違うのは、それだけではない。

木製の固い狭いベッド。着慣れないワンピースのパジャマ。
昨日夢の中で過ごしたはずの絵本の世界が、目を覚ましてもまだ続いていた。



――――もしかして、夢じゃない?


ベッドに座ったままもたもたと足を床に下ろし、ぎゅっと頬をつねってみる。

「痛っ!え、痛い…」

右手を頬に当てたまま呆然と呟く。


(どうしよう。本当に絵本の中に入ってしまったっていうこと…?)


昨日は完全に夢だと思ってたから何の疑問にも思っていなかったが、侍女のリサとしてこの世界で生きているということだろうか。

今自分は"日比谷梨沙"という意識ではあるものの、頭の奥の片隅に"リサ=レスピリア"としての記憶があることも確かだ。その証拠に昨日は夢だと思っていたこの世界が現実なのではと思い至ってから、昨日あの場所で倒れていた理由も思い出されてきた。


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