おとぎ話の裏側~身代わりメイドと王子の恋~

その一連の流れるような仕草がまるで本物の王子様のようで目が釘付けになる。神経の通っていないはずの髪の毛から彼の体温が伝わってくるようで、至近距離にある彼の美しい顔から目を背けた。

ジルベールはリサの艷やかな黒髪に何度か指を通しその感触を楽しむと「今夜は早く休め」とリサを部屋へ戻るように促す。


彼と別れ部屋に戻りながら明日のことを考える。シルヴィアに内緒でジルベールと約束をしたことに対する罪悪感はあまり感じなかった。

なぜなら、ジルベールは本物の王子様ではないと知っているから。シルヴィアが本当に惹かれ合い結ばれるべきは、今従者を装っているローランなのだから。

明日の午前中少し2人で抜けるくらいなら、きっと大事にもならない。

自室に戻って横になっても、なかなか眠気が訪れなかった。遠足が楽しみで眠れない小学生のようにワクワクしている。

リサは逸る気持ちを抑え、明日に備えて目を閉じた。




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